優しい手①~戦国:石田三成~【完】
いつものように城の周囲を走って、平地に設けられた兵たちの広大な訓練所にも顔を出して弓矢の練習をした。


その間に幸村が城へと呼び戻されてしまって、ひとしきり汗を流した桃は春日山城までの戻りの間にある土手に腰を下ろして小休憩を取った。


「ほら、水を飲め」


「うん、ありがと」


三成もクロから降りて隣に腰を下ろすと、滝のように汗が流れる桃の頬を手拭いで拭いてやり、ふっと笑んだ。


「な、なに?」


「そなたはわかりやすすぎる。謙信にまたやましいことをされたな?」


水が器官に入ってしまい、今度は咳き込んだ桃の背中を撫でてやりながら、ふつふつと沸く嫉妬心を隠せずに桃の顎を取った。


「み、三成さ…」


「謙信のことばかり気にして…。そなたの“はじめて”を奪ったのは俺だぞ。俺のことばかりを考えてしまうようにしてやろうか?」


普段は冷静な男なのに、時折壊れたかのようにして情熱をぶつけてくる三成は、桃の知っている三成だ。


間近で三成と視線を合わせてしまい、俯くと土手にどさりと押し倒されて、強引に唇が重なってくる。


「ん、んっ!」


「昨晩謙信と何があったか話せ。話さぬと…ひどい目に遭わせるぞ」


「駄目、言えないの…っ。三成さ、やめて、私もう、こういうのは……ん、んん…」


Tシャツの中に手が潜ってきて、汗まみれの身体を触られたくなくて、三成の両頬を挟むようにしてぱちんと叩いた。


「駄目だったら!も、三成さん相変らずだね!」


「だったらどうなんだ?謙信には許せて俺には許せぬ理由は?…ふん、もういい。もう聞かぬ」


拗ねてしまい、立ち上がろうとした三成の腕を引くと、頬にちゅっとキスをして顔を真っ赤にさせることに成功し、三成とこういうやりとりをするのが大好きな桃は抱っこをせがんでクロの背中に乗せてもらった。


「俺には触れられたくないのか?」


しつこく食い下がる三成の前に乗った桃はもたれかかって体重を預けると首を振る。


「ううん…汗がすごいし…そんな気分じゃないし…ごめんなさい三成さん」


「せめて謙信と同等の条件にしろ。でないとまた拗ねるぞ」


笑いが込み上げて頷いた。
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