優しい手①~戦国:石田三成~【完】
城へ戻ると何故か入り口には苦笑顔の謙信が居て…

その謙信に指を突きつけながら何か説教をしている背の高い男の姿が在った。


あの偉そうな態度…絶対にそうだ。


「政宗さんだ!」


「おお、桃!会いたかったぞ!」


右目に眼帯をして、いかにも君主らしい自信と尊大な態度を兼ね備え、クロから降りた桃を腕に抱き上げてじっくりと太股を鑑賞する。


「祝言を挙げると聞いて来てみれば…延期だの中止だの…はっきりせぬ!桃、どうなっている?」


「えーと…謙信さんはなんて言ったの?」


「私?“前と何も変わってないよ”って言ったよ」


…そう言われてみればそんな気もするが…今は、身体の関係もある。

だいぶ違うような気もしたが、下ろしてもらうと3人の視線を浴び、後ずさりをしながら作り笑いを浮かべた。


「あ、あの…お風呂に入って来ますっ。お話はその後で…」


「風呂か、いいな!俺も一緒に入ってもいいか?」


「駄目」


「悪ふざけが過ぎるぞ」


謙信と三成に非難されて子供のように唇を尖らせた政宗に、ほっとする。


強引で乱暴者だが、政宗と一緒に居ると少し安心する自分も居たりするので、駆け寄って腕を引っ張り、ちゅっと頬にキスをして手を振り、湯殿に向かった。


「…」


「……」


「ふふふ、いいだろう、桃からしてきたんだぞ。“きっす”というやつだな、親愛の証なのだぞ」


南蛮情報に詳しい政宗がふんぞり返ると、三成が毒を吐いた。


「所詮貴公は“親愛止まり”だ。口づけ如きではしゃいでいると底が知れるぞ」


「なに。そなたと謙信公と桃は一体どんな関係なんだ?そこに俺も加えろ!」


「めんどくさいからやだ。それより着いて早々申し訳ないけど軍議を開くから奥州代表として参加してもらえないかな」


「うむ。うちの兵はいつでも出陣できるように鍛えてある故いつでも頼るがいい」


豪快な笑い声を上げて尊大な態度を見せるが、謙信も三成も全く腹が立つこともなく、大広間へと向かった。


その頃幸村は、湯殿の前で警護にあたっていたのだが…


中から聴こえてくる桃の歌声と湯の音だけで…上せそうになっていた。
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