優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「桃、後で団子を持参して部屋へ遊びに行くからな」


「わっ、うん、待ってるね!」


優しく微笑みながら髪に触れてきて、その手を三成がばしっと払いのけながら追い払う。


「触れるな」


「ふん、そなたのものでもなかろうが」


言い合いをする2人の横を謙信が脇を通り抜けて行き、桃がその隙に三成の手を握った。


「?」


「さっき謙信さんと手を繋いだからこれでおあいこね」


部屋へ戻る間、後ろをついて来ている幸村の微妙な変化に謙信は気付いていて、歩きながら肩越しに幸村をからかう。


「嬉しそうな顔をしてるね。ようやく想いを口にできたのかな?」


「!と、殿…」


「あれ?当たり?このまま押し殺していくのはつらいだろうからね、それでいいと思うよ」


――謙信は最近よく別れを痛感させるような言葉を口に乗せる。


そうやって気持ちの整理をつけているのだと知りつつも、桃もつらい。

だが良い思い出を残したくて、笑っている自分の顔を覚えていてほしくて、にこっと笑いかけた。


「幸村さんみたいなイケメンに告白されるなんて元の時代じゃ絶対に体験できないから良い思い出ができたかな」


「い、いけめ…?」


南蛮の言葉には全く理解のない幸村が返すと、部屋に着くなり畳に寝転んだ。


「どうしたの、疲れた?」


「だって夜は宴会でしょ?お化粧したり打掛着たりって結構緊張するし疲れるんだよ。だから休憩ー」


ごろごろして寛ぐ桃の姿も、目に焼き付ける。


謙信も同じように横に寝転んで、来るべき決戦の足音を聞くように畳に耳を押し付けながら桃の顔をじっと見ていた。


「な、なに?」


「ううん、なんでも。そういえば政宗が団子持参で来るって言ってたね。私の分もあると思う?」


「なかったら私のと半分こしよ」


頬にかかる髪を払い、手を握って指を絡めた。


「君の笑顔のためならなんでもしてあげるよ。あと1か月ほどしかないけど…毎日笑わせてあげる」


「うん…。私も謙信さんや幸村さんを沢山笑わせてあげる」


楽しい別れにしたい。


誰もが切実にそう願いつつ、希望を捨てきれずにいた。
< 519 / 671 >

この作品をシェア

pagetop