優しい手①~戦国:石田三成~【完】
しまった、と思った。


三成を刺激してしまったことにその時気が付いて、意外と火が付くのが速いこの男は早速桃の掌を引き寄せて舌を這わせると、腕を強く引かれてその胸に倒れ込んでしまった。


「ちょ、ちょっと三成さ…っ」


「俺がいい男だと言ったな?ではそのいい男を置いて元の時代へ帰るそなたは損をしている。そう思わぬか?」


…こっちがどう言葉を返すか知っているくせに、わざとそう尋ねてきて桃が黙ってしまうと、指を絡めて握りこみ、唇を寄せた。


「駄目だってば、駄目…っ」


「そなたは出会った時からそればかり言う。俺も意外と辛抱した方だが、我慢の限界だ。桃、元親に近づくな。あ奴、そなたを狙っているぞ」


それは初耳だと言わんばかりに桃が顔を上げた瞬間三成が唇を重ねて、打掛を脱がせてきて、軽く唇を噛んで抵抗すると…余計に火がついてしまった。


「そなたにも痕をつけてやるぞ」


「駄目、三成さん、やめ、ちょ、ん…っ」


首筋を強く吸われてぎゅっと瞳を閉じるとようやく離れてくれて、急いで打掛を着直しながら立ち上がった。


「三成さんのエッチ!そんな風には見えないのに…むっつり!」


「な、なに!?」


途端顔が真っ赤になった三成につられて桃も真っ赤になってしまい、

鬼ごっこをするかのようにぐるぐると部屋の中を駆け回ると、打掛など着慣れていない桃はすぐに脚を縺れさせて転びそうになり、間一髪で三成が腕を伸ばすと抱き寄せて背中から転んだ。


「ご、ごめんなさいっ!」


「いや、いい。そなたの方こそ怪我はないか?」


頷くと、ほっとしたかのように息をついてそのまま三成が寝転んだ。


「これだからそなたからは目が離せぬ。もう一度言っておくが…」


「元親さんには近寄らないように、でしょ?どうして?悪い人なの?」


「いや…気付いていないならいい、気にするな」


気になるような言い方をされてむっとして頬を引っ張ると、逆に引っ張り返されてにらめっこのようになってしまった。


…謙信とはこんなことはできない。


これも三成の良さで、優しくて、不器用で、心の底から笑わせてくれる人――


隣で笑っていたい――
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