優しい手①~戦国:石田三成~【完】
毘沙門堂に籠もってお祈りをしようと思って、お堂の毘沙門天の像の前に居た。


「お願い…謙信さんや三成さんたちを守って下さい…」


…どのくらいそうして祈っていたかわからず、印を結んで小さく祈りを唱えていると…突然首のあたりが熱くなって、驚いて見下ろした。


最近はずっと首に下げていたネックレスについている時空を飛ぶ石の欠片が光っていて、急いでネックレスを外すと床に置いて、小さく聴こえる声に耳を澄ました。


…この現象はかつて三成の屋敷で体験した。


「お姉ちゃんたち!居るの?桃だよ、誰か返事して!」


『も…、桃!?』


「桜お姉ちゃん!桃だよ!お姉ちゃん!」


『桃!あんた…生きてるのね!?良かった…本当に良かった!』


今にも泣きだしそうな心配性の長女の声。

桃もとても懐かしくなって、ぐっと顔を近付けると大声で桜に状況を告げた。


「もうすぐお父さんとお母さんに会えるから!絶対一緒にそっちに帰るから心配しないで!」


『あんたはどうなってるの?石田三成と深く関わったりしてないわよね!?』


「…お姉ちゃん…とにかく私は大丈夫だから!戦が始まるの。三成さんや謙信さんたちが一緒に頑張ってくれるから!大丈夫だから!」


『謙信?まさか…上杉謙信のこと!?桃、あんた一体…』


だんだん声が遠くなってゆく。

桃はさらに大声で必死になって、心配させまいと思って早口でまくし立てた。


「お姉ちゃんたち心配しないでね、私は元気だし怪我もしてないし、みんなが一緒に戦ってくれるから!早く会いたいよ、私頑張るから大丈夫!」


『…も、桃…っ』


――石が光らなくなって、声も聴こえなくなった。


桃は両手で顔を覆って泣くまいと堪えながら、床を何度も叩いた。


「お姉ちゃん…お姉ちゃん…!」


「…桃」


声をかけてきたのは、もちろんこの堂の主。


全て聞かれていたが、姉の桜に言った言葉は…全て本音。


そう、帰らなければ。


元の時代に帰って、姉たちと両親と一緒に暮らすのだ。


「謙信さん…」


無言で隣に腰を下ろす。

無言で肩に寄りかかって、唇を噛み締めた。
< 551 / 671 >

この作品をシェア

pagetop