優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信はただ黙って、ずっと隣に座ってくれた。


こういう時の謙信は、決して慰めたりしてはこない。

理由も聞いてはこないし、ただずっと傍に居てくれる。


「…姉御と話ができてよかったね。私のことももっと紹介してほしかったなあ」


「だって…突然だったんだもん。謙信さん、ありがと。心細かったから…一緒に居てくれて嬉しい」


――きっと姉の桜は、謙信とこうして関わることも嫌がったはずだ。


だけど、一緒に居たい。


謙信と三成と…ぎりぎりまで一緒に居たい。


「ねえ、慰めてほしい?」


「…え?謙信さん、そんな人じゃないでしょ?急にどうしたの?」


いつもは悩んでいてもほったらかすくせに、今日に限って優しくされて、見上げると…


何故かこっちがせつなくなって泣きそうになってしまうほどやわらかく、優しい表情をしていて…


何故か別れの予感を感じて、ぎゅっと謙信に抱き着いた。


「どうして…そんな顔をするの?明日は戦なのに…謙信さん、やめてよ…!」


「私は死なないよ。死なないけれど…戦に勝っても負けても、君を失うことになるんだ。私は何を糧に頑張ればいい?君を失ってしまうのに、どうやったら頑張れるの?」


胸に顔を埋めて、もう何度こうして謙信に抱かれて一夜を共に過ごしたか――


もう、それもできなくなる。


途端、桃の瞳から涙が零れて謙信の胸を濡らした。


「泣いては駄目だよ。私だって君と別れる時は笑顔で送り出してあげたい。さあ、顔を上げて」


頬を伝う涙を謙信の綺麗な唇がなぞって吸い取ってくれて、この男と一緒に居るといつもどきどきして、

そのときめきをいつか元の時代でも感じることができるのだろうか?…いや、できるはずがない、と心の中で断言した自分自身に桃は苦笑した。


「ごめんね、お着物濡れちゃった…」


「じゃあまた一緒に湯に入ろうか?三成が追ってくるだろうけど私は気にしないよ」


「ふふ、駄目だよ。ねえ…謙信さんは…赤ちゃん欲しい?」


「当然だよ、君も赤子も傍に置いて悠々自適の暮らしをするのが私の夢なんだから」


夢は叶うのか。

毘沙門天は叶えてくれるのか?
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