優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃には自由でいてもらいたい。

…例え謙信と2人でいる時間がどれだけ長かろうとも、待ち続ける。


――三成は自室で秀吉に宛てた文を書いていた。


明日開戦する徳川軍との戦には何ら不安を抱いてはいない。恐らく圧勝するだろう。


問題は織田軍だ。

豊臣軍は今回秀吉の腰の持病を持ち出して、この戦には参加していない。

なので無傷であっさりと通過し、徳川軍と合流して大挙して攻めて来ようとしている。

だが徳川軍はこちらが明日攻めて行くことを知らない。

上杉軍はすでにじわりと徳川軍を包囲していて、後は謙信の出陣を待つのみになっていた。


筆を置いて寝転んでいると、いきなりふすまが開いて驚いて身体を起こすと、桃が上目遣いで座っていた。


「三成さん、ちょっといい?」


「どうした?何か問題でも…」


「明日からちょっと居なくなるでしょ?だから一緒に居たくって。駄目?」


「…駄目ではないが。謙信とはもういいのか?」


謙信の名を出すとはにかんで、膝をつきながら傍らに座って、腹の上に乗せていた手を握ってきた。


「な、なんだ?」


「前はこうして2人で話すのって当たり前だったけど、最近はあんまりなかったよね。ねえ、この時代に来た時、私は三成さんに殺されかけたんだよ。覚えてる?」


――あの頃は女子にはとんと興味がなく、秀吉に天下を獲らせるために日々全力を注いでいた時だった。


…今思えばとてもまともな状況ではなかった。

だが信じざるを得なかったし、桃は今もこうして実在してにこにこしている。


「そうだな、物の怪かと思った。だがそなたはいつも俺の手を優しい手だと言ってくれた。…情にほだされたんだな、きっと」


「ひどい!私にすぐキスしてきたくせに!


「な…っ、すぐではない!だが…日増しにそなたのことを愛しく想い始めたのは確かだ。……やめろ!妙なことを言わせるな!」


超がつく照れ屋の三成。

桃はそんな三成が大好きで、隣に寝転ぶと腕枕をしてもらった。


「家康さんと会ってしまったら全力で逃げてね?」


「俺は武将だ、逃げなどせぬ」


相変らずの鉄壁の意志。

そんな三成も、大好きだ。
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