優しい手①~戦国:石田三成~【完】
翌朝、上杉軍は密かに準備を整えた。


――大広間では僧服に着替えた謙信と甲冑を着た幸村や政宗、三成たちが集結していて、桃が走ったり追いかけたりすることのできないように女中連中から立派に着飾られて、上座にちょこんと座っていた。


「美姫に見送られて出陣とはこれは縁起が良い!桃、すぐに戻って来るからな、心配するなよ」


「うん!政宗さんは誰と一緒に居るの?」


「今回は謙信公の傍に居て戦いぶりを見るつもりだ。軍神と呼ばれる所以を探るためにもな」


「私は戦いたくないんだけどなあ。でも私の姫の為だし、君たちは怪我でもしては駄目だよ、桃が心配するからね」


――謙信は相変わらず甲冑も着ず、兜も被らず、弓矢でも当たってしまえばすぐに倒れてしまいそうなほど線の細い男なので、桃はずっと心配そうに見上げていて、


それが気に入らない面々は桃の前に勢ぞろいすると各々注意点を桃にくどくどと諭し始めた。


「今回は追いかけて来るな。そなたが追いかけてくるかもしれないと考えたら戦どころではなくなる」


「そうだぞ、今回は俺の軍は騎馬鉄砲隊だからな、ここまで鉄砲の音が聞こえるやもしれぬが案ずるな」


「政宗さん…わかりました」


「桃姫、拙者が殿を必ずお守りいたしますのでご安心を!」


「幸村さん頑張ってね!幸村さんのことは私心配してないから。すっごく強いもん」


…幸村だけ盛大に誉めた桃にまた面々がにじり寄ろうとすると、謙信が政宗の首根っこを掴んで引っ張った。


「鼻息荒くして桃を見ないでほしいな。この戦は前哨戦だからそんなに意気込まなくていいよ。でもとりあえず家康の首は私に残しておいてね」


「手柄を横取りするつもりか?俺が桃に家康の首を持ち帰るのだ」


「いや、俺が」


わいのわいのと騒ぐ政宗たちがおかしくて、今から戦に出て行くというのに気持ちが軽くなった桃は満面の笑みで皆に手を振った。


「無事に帰ってきてね。無事に帰って来てくれたら私が肩とかマッサージしてあげる」


「まっさーじ?南蛮の言葉か?それはつまり…」


政宗が食いついてしまい、謙信がまた首根っこを引っ張った。


「ほら行くよ。出陣出陣」


…軽い。
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