優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その頃安土城は…混乱に陥れられていた。


「どうなっている!?信長様が居ない時にこんな…っ」


「才蔵、佐助、私は牢へ行くから後をお願い!」


「逃げ道は作ってある。そこから脱出しろ!」


どこからか声が返ってきて、あちこち火の手が上がった城内を走り抜けた。


重臣のほとんどが信長と共に越後へ向かったので、こんな城を落とす位、訳なかった。


「貴様…信長様に寵愛されておきながら刺客だったか!」


「騙される方が悪いのよ。私が愛しているのは…」


「無駄口を叩くな、早く行け!」


――安土城を襲っているのは、軒猿と真田十勇士と言われる幸村の部下たちだった。


それぞれが幸村にその腕を見込まれており、忠誠心が厚く、今まで城内を才蔵、佐助、清野に任せて外から様子を窺っていたのだが、今こそ城を急襲すべき時――


もぬけの殻と化した安土城を落とすことは容易く、何事かと目を白黒させている2人の牢番の命を一瞬で奪うと、身を寄せ合っていた桃の両親…茂とゆかりを牢から出して、手にしていた打掛を2人の頭に被せた。


「私について来てください。ここから脱出します!」


「き、君は一体…」


「お味方だと申し上げたはずです。城を出ればすぐ秀吉軍と合流できます。どうかわたしを信じて!」


まっすぐな瞳で見つめる清野は嘘をついているようにも見えず、茂とゆかりは手を取り合うと牢を出て清野の後ろにぴったりくっついて城内を走った。


「佐助、才蔵、出るわよ!」


「俺は城内にさらに火を放って行く。佐助と先に脱出しろ」


――前方に目を遣った時、

そこには短髪でどちらかといえば快活な表情の見知らぬ若い男がこちらを見ていて、それが佐助だとわかるまで少し時間がかかったが、持っているくないと刀で佐助だとわかり、4人は十勇士が密かに庭に掘っていた穴へと入り、城の外へと脱出した。


「秀吉軍とは…桃は一体どういうことに…!?」


「謙信公の庇護の下でご無事です。さあ、お早く!」


――森の奥を少し行くと十数人の秀吉軍が待機していて、清野はそこでようやく息をついた。


これで、謙信に誉めてもらえる。


越後へと、帰れる――
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