優しい手①~戦国:石田三成~【完】
秀吉自ら城内を案内され、人払いをした小さな部屋に茂とゆかりは通されて、頭を上げられずにいた。


「よいよい、儂が勝手にそなたらを救おうと思ったのじゃから感謝せずともよいぞ」


「それで…あの…私たちの娘は…」


ようやく顔を上げた茂とゆかりを見て、秀吉は顎髭を撫でながら豪快に笑い、入って来た茶々を隣に座らせた。


「うちの三成が桃の親御を捜しに越後へ行くと申して、今は越後の上杉謙信公の下におる。ちなみに儂も上杉軍と合流する予定じゃが、ついて来るか?」


「ほ、本当ですか!?あなた…!」


――桃の両親が手を取り合って喜んでいる姿を、茶々は複雑な思いで見ていた。


桃は謙信と三成の間で心が揺れている。


ここに何度も遊びに来た時は謙信の影はなく、三成一筋のように見えた。

だからこそ、諦めたのに。


…少しだけ桃が憎くなって黙り込んでいると、秀吉は茶々の膝に触れて顔を覗き込んだ。


「どうだ、一緒に来るか?桃姫と会いたいじゃろ?」


「…はい」


――三成と会いたい。


そう思ったが、本音を隠して笑顔でそう言うと秀吉はでれっとなって、腰を上げた。


「軍議がある故そなたらはここで身体を休めておきなさい。明日出立する」


「何から何まで…ありがとうございます」


優しくしてくれる人たちが桃の回りに居る――

秀吉が退室して茶々だけが残り、もそっと近づくと、2人の手を握った。


「桃姫はとても心細い思いをしておりました。ですが三成が…三成を変えて、共に越後へと行ったのです。桃姫には感謝しております。できればこの時代へ残ってもらいたいのですが…」


「それは…できません。私たちはもうどうしようもないほどに歴史を狂わせています。これ以上は…」


「…そうですか。三成が悲しみます。…越後へはわたくしも共に参ります。桃姫のお話を沢山してくださいね」


たおやかな茶々。

史実では石田三成と恋仲にあったとされ、今目の前に居る茶々はその史実通り、三成に恋をしているように見えた。


「連れて帰りたいが…どうなることやら」


「あなた…」


桃の決断に任せたい。

娘には幸せでいてほしい――
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