優しい手①~戦国:石田三成~【完】
まず戻ってきたのは、政宗だった。


不機嫌全開の政宗はそれでも出迎えに出て来てくれていた桃を見て満面の笑顔になり、兜を取ると小十郎に押し付けて桃を強く抱きしめた。


「出迎えご苦労!」


「こらこら、ここは私の城なんだけど」


共に戻って来た謙信は相変わらず返り血ひとつ浴びておらず、その後ろに続いて帰ってくるであろう三成が戻って来るのを待っていたのだが…


続いて見えたのは、髪を短く刈り込んだ徳川家康の姿だった。


…瞬時にしてぴんと空気が張りつめて、その張りつめた空気を作り出したのは何を言う桃自身で…


急に雰囲気の変わった桃の頭を謙信が優しく撫でて、背を押して笑った。


「全面降伏だよ。三成には何もさせないから安心して」


「謙信さん…三成さんはまだ戻って来ないの?」


「さっきまで国境沿いを見張ってたらしいけど、こっちに向かってるらしいからしばらくすれば戻って来るよ。…それよりも桃」


「え?」


「そんなに三成の心配ばかりされるとさすがに腹が立つんだけど。ああ疲れちゃったから君の膝枕で横になりたいなあ」


「ふざけるな、それは俺の台詞だぞ!」


「いや、俺が」


勝手に元親も参戦してしまい、桃が頬をかいていると家康が桃の前で膝を折った。


「桃姫…此度は数々の非礼をお詫びいたします。これより三河は上杉軍にお味方いたしますので、どうかお許し下さい」


「…三成さんに何もしないで下さい。それだけ守ってくれればいいんです」


――頑なに三成を想い、三成を案じ、正門から根っこを生やしたかのように動かない桃の手をそっと繋いだのは、謙信だった。


「私もここに居るよ」


「だ、駄目だよ謙信さんは疲れてるんだから。早くお城の中に…」


「いいんだよ。何もすることがなかったから大して疲れてないしね」


目元を緩めて微笑した謙信に、不安で揺れていた心が少しだけ和らいで、2人でその場に中腰になって座ると土で三成の顔を落書きして笑った。


「いつもこーんな難しい顔してるよね」


「この三成は格好良すぎるから少し悪戯してやろうかな」


「あ、駄目っ、書き足さないで!」


和む。
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