優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成が春日山城に戻って来た時――


正門には桃と謙信、そして幸村の姿があって、立ち話をしていたのか楽しそうにしていて、ややむっとしながらその横を素通りした。


「あっ、無視した!ひどいよ!」


「話に夢中で気付かないかと思っていたが違ったか」


「嫌味まで!せっかく優しくお迎えしようと思ってたのにっ」


怒ってしまった桃に引っ込みがつかなくなった三成が黙り込んでしまうと、クロが勝手に桃に近寄って鼻面を寄せて“撫でろ”と要求した。


「クロちゃんは素直だねー。謙信さんも素直だよね。幸村さんはもっと素直だよね」


「…俺とて素直だ」


「三成さんが1番ひねくれてるもん」


「そうだねえ、三成は1番ひねくれてるよね」


ここぞとばかりに謙信が同意して、皆で城内へ入り、三成がどこも怪我をしていないか後ろを歩きながらさりげなくチェックした。

そして三成が甲冑を脱ぐために1度部屋に戻り、大広間へ入って上座に座ると早速元親がにじり寄ってきて、あからさまに好意を向けられてどうしたらいいかわからなくて謙信の背中に隠れ続けて、縮こまっていた。


「桃は元親が苦手なの?」


「苦手っていうか…好きな人と私の姿を重ねてるから、元親さんが好きなのは私じゃなくて前に好きだった人なわけで…」


「私はちゃんと桃が好きだからね」


ウィンクしてきた謙信に頬を赤らめて俯いていると、三成が入って来た。


家康と三成が視線を合わせて立ち止まり、史実では家康の命令で斬首にされた三成と家康を会わせるのに大反対だった桃は、三成の手を引っ張って上座の脇に肩を押して無理矢理座らせた。


「三成さんはここ!」


「…皆が見ているが…」


「気にしなくっていいの!あと…家康さんと目を合わせないで。できれば会話もしないで」


「横暴だな。俺は史実では家康に何かされたんだな?」


――袖を握って離さない桃を安心させるように何度か手を撫でて、政宗が面白くなさそうに鼻を鳴らして左近の肩に思いきり肩をぶつけた。


「おもしろくない空気だな。おい、酒を運んで来い!三河も同盟国になり、上杉軍はこれで安泰ぞ!」


桃は決して家康と目を合せなかった。
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