優しい手①~戦国:石田三成~【完】
怖ず怖ずと手を伸ばして母の着物の袖を握ると、優しく手を包み込んでくれた。


「話は聞いたわ。…赤ちゃんができてるかもしれないんでしょう?」


「…お母さん…ごめんなさい…」


込み入った話になりそうなことに気付いた政宗は幸村の腕を引っ張って立たせながらにかっと笑いかけた。


「俺たちは席を外しておこう。桃、早く元気になれ。でないと調子が狂う」


「うん、ありがとう政宗さん」


――部屋を出て行って襖が閉まると、母に抱き着いた。


「私がこの時代に飛んで来た時はすでに信長は生きてて、三成さんや謙信さんたちは同年代で存在してたの。これって私のせい?私がここに飛んできたからっ?」


「…違うわ、信長が生きているのはきっと私と茂さんが狂わせたの。オーパーツは回収できたんだけど…ふふ、これなの」


ゆかりが懐から取り出したのは、ピンクや黄色、青といったカラフルなビーズを使ったブレスレットだ。


こんなものが時代を狂わせるのか、と言われれば違うかもしれないが、この時代に存在してはならないものには違いない。


「帰ろうとした時に捕えられてしまったのよ。なんとか越後まで命からがら逃げ来たけど…駄目だったわ。結果、桃をこんなことに…」


まだ成人してもいない娘が妊娠。

この時代では当たり前のことでも、桃たちが生きている現代では違う。


「桃…私たちと戻る?それとも残るつもり?」


途端桃がぱっと顔を上げて、泣き顔になった。


悪阻のような症状に苛まれて余計に不安に陥り、誰にもその想いを吐きだせずにさらに不安になったのだろう。


会えてよかった。

娘の話を聞いてあげられる。


「…桃、一緒にお風呂に入りましょうよ。実はさっき謙信公に勧められてたの。大きいお風呂なんですってね」


「!うん!お母さん、一緒入ろ!」


少し元気になった桃と一緒に部屋を出ると、そこで出くわしたのは…


「あ…、茶々さん…」


――秀吉の側室にして、密かに三成を想う浅井家の姫。


記憶を失くして瀕死の怪我を負った三成を懸命に看病してくれた恩人だ。


桃は茶々に力いっぱい抱き着いた。

茶々も、抱き返してくれた。
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