優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「桃姫…あなたのことをとても心配していたけれど、お元気そうでよかった」


ふんわりと笑いかけてくれた茶々の手を握って離さないでいると、母から笑われた。


「桃、お風呂に行くんでしょう?」


「あ、うん。そうだ、茶々さんも一緒に…」


茶々はしずしずと室内へ入るとゆっくりと襖を閉めながら笑った。


「まだ謙信公とお会いしていないので紹介して下さい。それまでここで待っています」


「うん、待ってて!」


――すっかり元気を取り戻した桃に頬を緩めたのは常に傍に在る幸村だった。


「桃姫、どうぞごゆっくり」


「ありがとう幸村さん。一緒に入る?」


「!い、いえ!せ、拙者はその…」


からかうとすぐに顔を真っ赤にして俯いてしまった幸村の反応に母が笑った。


「親切な人たちが桃の傍に居てくれてよかったわ。背中を流してあげる」


「お母さん…ありがとう。私もお母さんの背中流してあげる!」


――桃たちが風呂に入っている間、桃の部屋で待っていた茶々の元に謙信と三成がやって来た。


「あれ、桃は?あなたが茶々殿か」


儚げに笑ったその男――一瞬茶々は女と見紛う美貌の謙信に見惚れてしまい、慌てて頭を下げた。


「け、謙信公…!」


「ああ、改まらないで。あなたが来るのは想定外だったけれど、もう桃と会った?」


「は、はい。床に臥せっていたようで心配しております」


部屋には床が敷かれたままだ。


部屋を見回していると、謙信の背後に控えていた三成と目が合った。


「茶々殿」


「…元気そうですね。記憶が戻ったと聞きました」


三成がはにかんで頭を下げた。

長年想ってきたけれど、もうそろそろ終わりにしなければ。


――茶々は背筋を伸ばして凛とし居住まいで謙信を真っ向から見つめた。


「此度の戦でこの国に平穏を。秀吉様もそれをお望みになっておられます」


「私に天下統一をさせようとしてるのかな?それは無理ですよ、私はのんびり暮らしたいんです」


くすっと笑った謙信がじっと茶々を見つめて扇子を鳴らした。


「桃と沢山話をしてあげて下さい」


労わる。
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