優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信が桃を迎えに行こうと思って席を立ち、廊下を歩いていた時――
「…謙信様…」
「ああ、清野?よく尽力してくれたね」
床に額がつきそうなほどに深く頭を下げた清野に声をかけると、身体が震えた。
「君の働きには本当に感謝しているよ。褒美は何がいい?」
――瞳は潤み、上目遣いで見上げて来る清野が何を欲しているかは知っている。
だが、それを与えてはならない。
桃を裏切りはしない。
「では…」
「私以外の何かで頼むよ」
腕を組んで柱に寄りかかると、怖ず怖ずと白い手を伸ばして腕に触れてきた。
「1度…1度でいいのです。私を…抱きしめて下さいませ」
「それはできない。私は桃以外の女子には触れないと決めたんだ。だから…」
さらに拒絶の言葉を口に乗せようとした時――
清野がぎゅうっと抱き着いてきて、一瞬ぽかんとしてしまった。
「打ち首になっても構いません。謙信様にもう1度…触れたかっただけでございます。あなたの刀にかかるのであれば幸せでございます」
…健気だ。
たった1度、仕置きとして抱いただけなのに、それを宝物のようにして大切にしている清野。
「ふふ、もうこれでおしまいだよ。君の働きがあったから桃は親御と会えたんだからね。じゃあまた後で」
「はい…」
――謙信の細く固い身体…
謙信に見つめられただけで一気に熱くなった身体…
清野は謙信が見えなくなるまで見送った後、膝から崩れ落ちて両手で顔を覆った。
「謙信様…」
あの長く苦しい潜入も一瞬で報われた。
抱いて欲しい、とまではもう言うつもりはない。
ただ少し…少し欲張りになりたかった。
だがそれも報われた。
これからも謙信の傍で働いてゆこうと決意し、腰を上げた。
――そして湯上りの桃と謙信は湯殿の前で落ち合った。
「あれ?謙信さん、お風呂入るの?」
「いや、君たちを迎えに来ただけだよ。むさくるしい男たちと一緒に居るのは飽き飽きなんだ」
桃の肩を優しく抱いて再び私室へ向かって歩き出した謙信は、桃の喜ぶ一言を発した。
「今日はご馳走だよ」
「…謙信様…」
「ああ、清野?よく尽力してくれたね」
床に額がつきそうなほどに深く頭を下げた清野に声をかけると、身体が震えた。
「君の働きには本当に感謝しているよ。褒美は何がいい?」
――瞳は潤み、上目遣いで見上げて来る清野が何を欲しているかは知っている。
だが、それを与えてはならない。
桃を裏切りはしない。
「では…」
「私以外の何かで頼むよ」
腕を組んで柱に寄りかかると、怖ず怖ずと白い手を伸ばして腕に触れてきた。
「1度…1度でいいのです。私を…抱きしめて下さいませ」
「それはできない。私は桃以外の女子には触れないと決めたんだ。だから…」
さらに拒絶の言葉を口に乗せようとした時――
清野がぎゅうっと抱き着いてきて、一瞬ぽかんとしてしまった。
「打ち首になっても構いません。謙信様にもう1度…触れたかっただけでございます。あなたの刀にかかるのであれば幸せでございます」
…健気だ。
たった1度、仕置きとして抱いただけなのに、それを宝物のようにして大切にしている清野。
「ふふ、もうこれでおしまいだよ。君の働きがあったから桃は親御と会えたんだからね。じゃあまた後で」
「はい…」
――謙信の細く固い身体…
謙信に見つめられただけで一気に熱くなった身体…
清野は謙信が見えなくなるまで見送った後、膝から崩れ落ちて両手で顔を覆った。
「謙信様…」
あの長く苦しい潜入も一瞬で報われた。
抱いて欲しい、とまではもう言うつもりはない。
ただ少し…少し欲張りになりたかった。
だがそれも報われた。
これからも謙信の傍で働いてゆこうと決意し、腰を上げた。
――そして湯上りの桃と謙信は湯殿の前で落ち合った。
「あれ?謙信さん、お風呂入るの?」
「いや、君たちを迎えに来ただけだよ。むさくるしい男たちと一緒に居るのは飽き飽きなんだ」
桃の肩を優しく抱いて再び私室へ向かって歩き出した謙信は、桃の喜ぶ一言を発した。
「今日はご馳走だよ」