優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信が桃を迎えに行くと部屋はもぬけの殻で、すぐにぴんと来た謙信は桃の両親を通した客間に足を運んで襖を開けると…絶句した。


「あ、謙信さん」


「これはこれは綺麗にしてもらったね」


いつか桃に贈った緋色の打掛に袖を通し、薄化粧をして紅を薄めてそれを瞼に塗った桃はとても綺麗で、茂とゆかりは胸を張って自慢しながら桃を座らせた。


「君は本当に化粧ひとつで驚くほど変わるね」


「女の子はみんなそうだよ。でも私元々お化粧とか全然しなかったし、ちょっと慣れてなくて恥ずかしいかな」


「ううん、そんなことないよ。うん、綺麗綺麗」


誉められまくって嬉しくてにこにこしていると、今度は桃を方々捜しに現れた三成が謙信と同じような反応をした。


「も、桃…親御に美しくしてもらったな。に、似合っている」


「ほんと?三成さんも座って座って」


手を引いて無理矢理謙信の隣に座らせると、本来は三つ巴の修羅場になっていてもおかしくない状況なのだが謙信と三成は争う素振りも見せず、鼻の下を伸ばしていて茂たちを笑わせた。


「明日は決戦だとか。私たちも覚悟をきめております。ご存分にご采配をお奮い下さい」


「うん、大丈夫だよ。私は絶対に敗けないから」


…相変らず絶対的に揺るぎない自信を見せる謙信は頼もしく、普段だらだらのんびりしている謙信とは違う顔を見せて桃をきゅんとさせ、三成が大きく咳払いをした。


「謙信公や政宗公、幸村は前線に出る故桃の身は俺が守る。案ずるな」


「最初から心配してなんかないよ。みんなが居れば大丈夫だって知ってるから。ね、ねえ…それよりも良い匂いがしてきたねっ」


「ふふ、お腹が空いてきたみたいだね。じゃあみんなで行こうか」


桃の右手を謙信が。

左手を三成が握り、絶対に桃が転ばないように気を使いながら大広間まで向かう3人の後ろを茂とゆかりは歩きながら、手を握り合った。


「あなた…」


「…私たちはとりあえず帰る術を捜そう。あの子がどうするかはあの子が決めるしかない」


「ええ、そうね…」


桃はここに残るべきだ。

でなければ、娘の笑顔は金輪際見ることができなくなるかもしれない――
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