優しい手①~戦国:石田三成~【完】
天守閣から見える山の向こうは真っ赤に燃えていた。


それがなんだかとても恐ろしく見えて、桃が身震いをすると謙信はそっと障子を閉めて桃の視界から追い遣った。


「あれって…織田軍の…」


「まあそうだろうね。勝手に木を伐り出されて燃やされるのは腹が立つなあ…明日早々に追い払ってしまおう」


のんびりな口調ではあるが、瞳は笑っていない。

桃が不安そうな顔で見上げると、床に座っていた三成が桃の手を引っ張った。


「早く寝ろ。湯たんぽを入れておいてやった」


「優しい!ありがとう三成さん」


3つ敷かれた床。

もちろん真ん中は桃で、いそいそと身を横たえると布団がぽかぽかしていて、心もぽかぽかしてきた。


「謙信さんたちは全然緊張してないんだね。どうして?」


問うと謙信は枕を胸に抱き込みまがら当たり前のように笑いながら言った。


「日常茶飯事だし。相手が誰であれ戦は戦。いつも緊張はしていられないねえ」


「そっか…そうだよね、ここは戦国時代だもんね」


つい忘れそうになってしまうが、彼らは歴史上とても有名な人物たちなのだ。

黙って毛布を被ると、両脇から謙信と三成も潜り込んできてもみくちゃになってしまった。


「また考えなくてもいいこと考えてるんでしょ」


「だって…仕方ないよ。あの石田三成tと上杉謙信なんだもん。すっごくすっごく有名なんだから!」


息苦しくなって顔を出すと、三成が指で蝋燭の炎を消しながら息をついた。


「だからそれがなんだ?どうでもいいことを考えるな。それより腹を冷やすな。肩までちゃんと布団を着ろ」


三成に気忙しく世話をされながら肩まで布団をかけてもらうと、謙信が肩肘をつきながら桃の額を指で突いた。


「まだ私がかっこよく戦ってる姿をあまり見たことがないでしょ?張り切っちゃうなあ、明日は頑張ろうっと」


「ふぬけた面をして士気を下げるなよ。桃は俺が守る故好きに戦え」


「ひどい言い方するなあ。まあ桃、見ててごらん。本気の私はかっこいいよ」


…三成と謙信の小競り合いが心地いい。

不安に揺れていた心も安らぎ、桃はいつの間にか眠っていた。
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