優しい手①~戦国:石田三成~【完】
しばらく順調に歩を進めていると、北側の森から大きな集団が駆けてくるのが見えた。


三成の一団は一瞬身構えたが…彼らが掲げている旗印に頬を緩め、馬を止めた。

そして目の良い桃が目を凝らして見つめていると…

戦国随一と言われた美男子の男が大きな声で、名を呼んだ。


「桃姫ーー!」


「!トラちゃんだ!」


現れたのは上杉景虎…現在は北条三郎という名だが、景虎が息を切らしながら目の前で馬を止めると懐かしそうに瞳を細めた。


「お久しぶりのような気がいたします。ほんの少し離れていただけなのに…」


「トラちゃん!元気そうだね、よかった!トラちゃんも傍に居てくれるの?」


完全装備の景虎は真っ白な肌に朱を上らせながら首を振り、三成の上腕をぎゅっと握った。


「俺は父上の…謙信公のお傍へ参ります。桃姫、あなたが帰ってしまう前にお会いできてよかった」


「…ありがとうトラちゃん…。カッちゃんは謙信さんの傍に居るから早く行ってあげて」


「はい。もしご懐妊されているのならば父上の子でありますように。仏頂面の子が生まれぬよう祈っております」


「…余計なお世話だ」


文字通り三成が仏頂面になって手綱を握るとクロが前進を始め、景虎は『毘』の旗印を隣に居た北条軍の者の手から奪うと大きく振りながら最後に肩越しに振り返って、笑った。


「あなたと笑顔でお別れするために全力を尽くします!お願いですから前線へ来ないで下さいね!」


「もうっ、みんなしてひどいよ!」


「皆そなたがじゃじゃ馬なことを知っている。さ、行くぞ」


なるべく桃の身体に振動が伝わらないようにゆっくり前進する三成の軍は敵からしたら格好の餌食だ。

だが回りを固めているのは海の上で鍛えた屈強な集団の元親の軍と、左京が今まで密かに鍛え、まとめた上杉の軍。

数百の集団は鉄壁の守りを見せながら桃を囲み、脱落者はまだ誰1人として出てはいなかった。


「トラちゃんと会えて良かった。相変わらずかっこよかったね!」


「…他の男を誉めるな」


「三成さんが1番だってば」


「嘘をつけ、謙信が1番だろうが」


最終決戦の前に、言い合い。
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