優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「謙信さん…一騎打ちって…」


馬を進めながら問うと、謙信はやわらかな笑みを浮かべて頷いた。


「そうだよ、それが1番手っ取り早いでしょ?あっちから提案してきてくれて助かったよ」


「でも…織田信長っていったら私の時代では…」


「彼の名が後々の歴史に名を連ねていること自体はよくわかるよ。だって彼は悪評で有名だからね。同じ時代で生きて相対することができてよかった」


義を重んじる謙信にとっては、信長の数々の悪評は不快なものでしかなかった。

だが戦は嫌いだ。

こうして信長を倒す好機を得ることができたのは、桃のおかげだ。


「あれ?もしかして…私が敗けるとでも思ってるのかな」


顔を覗き込まれ、慌てて笑顔を取り繕いながら首を振った。


「そ、そんなことないよ!謙信さんは無敗の将だもん。でも…今日で全部終わるんだね」


「うん、慣れない時代にこんなに長く留まらせてしまって申し訳なかったね。…早く帰れる方法を見つけよう」


「…そだね」


――政宗は重たい雰囲気になってしまった桃を後方から見つめつつ、自身が所持している石を渡す時機を図っていた。


恐らく、あの石が最後の欠片なのだろう。

あれがうまく機能すれば、晴れて桃は無事に元の時代へと帰れるかもしれない。


「…これでいいのか?」


「え?政宗さん、今なんか言った?」


「いや、何も。それより謙信公…そなた…」


馬を寄せ、身体を謙信の方へと傾けながら政宗が耳打ちをした。


「桃姫の父御のものと思われる例の絵のやつ…確と渡すのであろうな?」


「いやだなあ、疑ってほしくないんだけど。ちゃんと渡すし、それより君の方が心配なんだけどな」


「阿呆が、俺は約束を守る男だぞ。それより晴れてきたな、決闘には持って来いだ」


「私は晴れ男だから当然だよ。桃、寒くはない?私の前においで」


謙信に呼ばれ、三成がむすっとなったのが視界の隅に入りながらも、桃が腕を伸ばすと謙信が掬い取るようにして脇を抱え、前に乗せた。


「特等席だよ」


「わあ…、なんか安心する…」


香に包まれ、吐き気が治まった。
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