優しい手①~戦国:石田三成~【完】
時々弱い姿を見せることがあり、そういう時は心配でたまらなくなって、いつもいつも…謙信を抱きしめて、ぬくもりを与えた。


今も身体は小刻みに震えていて、火鉢を引き寄せると俯いている謙信の両頬を包み込んでひたと見つめた。


「謙信さんと三成さんが居てくれなかったら…私はとっくの昔に死んでたと思う。謙信さんが居てくれなかったら…私……謙信さんにいろんなこと教えてもらったし、喜びも与えてもらったよ。すごく感謝してるの。だからお願い、そんなこと言わないで…。私は絶対に謙信さんのこと、忘れないから」


「この世に“絶対”はないんだよ。今はそう言い切れても、誰かを好きになってしまえば私の存在は君の中で悪しきものに変わってしまうかもしれない。それが…怖いんだ」


さらさらの少し長い前髪が表情を隠してしまい、何を言っても聞き入れてもらえない状況に業を煮やした桃は…


立ち上がり、誰かが敷いてくれていた床をずるずると引っ張って来ると、謙信の手を引いた。


「謙信さん…さっきから震えてる。あっためてあげるから…横になろ?」


「平気だよ。君の居なくなる日々にいちはやく慣れなきゃね。さあ、三成の所に行っておいで」


――時々こうして突き放されることもあった。

いつも優しいが、時に現実を叩きつけてくる上杉謙信――

明日にはこの男に触れることも適わなくなってしまうかもしれない。


「…謙信さん、見て」


「……桃…何を…」


ゆっくりセーラー服を脱ぎ、下着だけの姿になると、謙信の手を胸に導いた。


「謙信さんに沢山沢山触ってもらって…この手の感触、絶対に忘れないから。だから…謙信さんも、今手に伝わってる私の身体の感触…忘れないで。お願い…忘れないで…」


「…ふふ、忘れないと思うよ。多分ね」


ようやく少し笑みが戻り、謙信を床に寝かしつけると、色気がだだ漏れの謙信が腰を抱いてきて身体が密着し合った。


「…駄目?」


「……三成さんには内緒だよ」


「…愛してるよ、桃…」


直後、火がついたように唇を貪られ、全身を大きくて優しい手が撫でてゆく。


…忘れたくない。

ここで過ごしてきた日々を、何もかも――
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