優しい手①~戦国:石田三成~【完】
――遠くから声が聴こえた。


『次は…来世こそは、一緒になろう。いいね、約束だよ』


『はい…。今度こそはあなたと…あなたと一緒に…』


ゆっくりを目を開けると…


毘沙門天の大きな像が飾られている寺のような場所で…

毘沙門天の像の前で抱き合う男女の姿が在った。


男は優しそうな顔立ちで、誰かに似ている。

女はおしとやかな顔立ちで、白い巫女姿だった。


その場は…炎に包まれていた。


『私…独りで死ななければならないのに…。毘沙門天様の人身御供として独りで逝かなければならないのに…』


『独りでなんか行かせない。やっとこうして君に触れることができたんだ。今までは言葉しか交わすことができなかったんだ。こうして抱き合うことなんて…できないと思ってた。でも…私は幸せだよ、一緒に逝こう。毘沙門天の下へ。そして来世で必ず結ばれよう。約束だよ』


炎がゆっくりと2人に近づく。


桃は精一杯大声を上げて避難させようとしたが、その声は彼らには届くことはなかった。


一瞬にして2人は炎に包まれ、ぎゅっと目を閉じた時――


「…桃?どうしたの、大丈夫?」


「あ……あ…、謙信さん…!謙信さん…!」


止めどなく涙が溢れ、今こうして心配そうに頬を撫でてくれている人が、“あの人”だという直感を抱いた。



「謙信さん…私のこと、覚えてない…?」


「……桃…もしかして…思い出したの…?私たちの…前世を」


「…っ、謙信さんも…この夢…見たことがあるの…!?」


「…もう何度も見たことがあるよ。ああ、やっぱり君が…そうなんだ…君が…」



前世で誓い合った愛しい相手――


その喜びに身体が震え、謙信と桃は強く抱き合った。


――あの時独りで死ななければならなかった運命を共にしてくれた男だ。


――死を定められた巫女に惚れ、触れてはならない掟に縛られ、最期にようやく抱きしめることができた愛しい女だ。



「桃…!」


「謙信さん…!」



惹かれ合う意味がようやくわかった。


それは前世から定められた運命。

前世から、決まっていた運命。
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