優しい手①~戦国:石田三成~【完】
どうして離れなければならないのか――

こうして時を超えてまた出会えたというのに…どうして?


「前世では君を抱きしめることができて…そして今、君を抱くことができて…その次は?君が元の時代に戻って…私と君がそれぞれの時代で天寿を全うして死んで、来世では夫婦になれると思う?」


「…せっかく毘沙門天さんが出会わせてくれたのに…つらいよ…私…どうしたらいいのかわかんなくなってきたよ…」


記憶が蘇り、あの時あの場所で共に死を分かち合ったことも全て思い出して、短い生を共に終えてくれた謙信にしがみついた。


「桃…私は君にずっと言い続けてきたよね、“君の選択に任せる”って。でも言わせてほしい」


「何を…?」


蝋燭の炎に照らされる謙信の表情は憂いに満ちていて、こつんと額をぶつけると、大人ぶってひた隠しにしてきた想いを告白した。



「ここに残ってほしい。君を迷わせてしまうことはわかっているけれど、私には君が必要なんだ」


「謙信さん…」



――元々からして迷いまくっていたのだ。

だが謙信から力強く抱きしめられてそう言われてしまうと、思ってしまった。


ここに残りたい、と――


だが三成の存在もまた謙信のように大きく、2人の間で揺れる自身の優柔不断さを桃は呪っていた。

だから別れの決意をしたのだけれど…



「三成か私かを選べないのはわかっている。だけどそれが何?私たちはそれをもうどうとも思っていないよ。同じ位愛されているのならいいんだ。だから悩まないで」



…心のもやもやが一気に晴れた気がした。


本当は絶対にあってはならないことを“それでもいいんだ”と認めてもらえて、みるみりう涙腺が緩んだ。


「謙信さんは…それでいいの…?」


「私も三成もそれでいいと思ってるよ。君がこの時代に残ってくれるのなら、どんなことだってやってみせる。だから…ぎりぎりまで悩んでほしい。こんなお願いをしてごめんね、でも必ず明日は信長を討ち取ってみせるから。見ていて」


「うん…うん…!」


最後まで悩み抜こう。

それが自分にできる唯一のことだから――
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