優しい手①~戦国:石田三成~【完】
そうしているうちに幸村が捜しに来てくれて、鮮やかな緋色の甲冑に緋色の鉢巻をした凛々しい姿の幸村はかっこよくて、駆け寄ると両手をぎゅっと握った。


「も、桃姫っ?」


「幸村さんかっこいい!頼もしい!素敵!ね、一緒にご飯食べよっ」


「は…、はっ!有難き幸せ!」


桃にモテモテな幸村はすぐに顔を赤くし、手を引っ張られるがままに山を上っていくと、取り残された謙信と三成は肩を竦め、織田軍の陣地から上がる煙を見つめた。


「今回は私に一任してもらえるかな。あのならず者の首は私が頂くよ」


「好きにすればいい。俺は…桃を守る」


「そうしてくれると助かるよ。さあ、幸村だけにいい想いをさせるのは癪だから早く戻ろうか」


三成が山を上り始めると、謙信は木々の影から見える空を見上げ、ぼそりと呟いた。


「毘沙門天よ…私に加護を」


――そして幸村と手を繋いで本陣へ戻った桃は、焼き魚とみそ汁、お漬物に早速舌鼓を打ち、お櫃を引き寄せると幸村のお椀に米をてんこ盛りに盛った。


「桃姫、そんなには食せません」


「えー?食べれるでしょ?私沢山ご飯食べる人大好きだよ」


にこにこ笑う桃に“大好き”と言われたいがために必死に米を掻っ込んでいると、元親が負けじと桃にお椀を差し出した。


「俺はその者よりもっと食せます」


「なに?拙者の方が…」


「やってるねえ」


謙信が戻って来ると一同が立ち上がって膝を折ったが謙信は座るように指示をすると即席の椅子に座り、桃がお盆に朝餉を乗せて隣に座った。


「私、お代わりしようかな」


「じゃあ私と一緒に食べようか」


…これから戦だというのに何の緊張感もなく、桃の口の端についた米粒を取って口に入れた謙信は味噌汁を飲みながら政宗や秀吉、左近らを見回し、笑んだ。


「この戦は誰も死なないから安心して。死ぬのはあの織田信長だけだからね」


「貴公は緊張感が足りぬが何ぞ勝算でもあるのか?」


「ないよ。相対して、討つだけ。それだけだよ、簡単でしょ?」


政宗が憮然とした表情になると、謙信は繰り返した。


「大丈夫。私に任せて」


今度こそは。
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