優しい手①~戦国:石田三成~【完】
石は政宗も所持している。
…これで桃が現代へと戻れる条件が整い、謙信は小さく息をつきながら愛馬を止めた。
「私が勝ったらそれを返してもらうよ」
「たわけ。貴様のような優男に儂が負けるものか!」
激高した信長が馬の腹を蹴り、猛進してきた。
ぐんぐん迫ってくる信長に対し、謙信は向かいもせずにまた大きく深呼吸をすると、毘沙門天に祈りを捧げた。
「信長に天誅を」
――前世で夫婦になれなかった愛しい女がまた去ってしまう――
だが桃が現代へ戻ることを望んでいるならば、また来世に想いを馳せよう。
今生では、側室も正室も娶らない。
桃と結ばれるまでは…毘沙門天に祈りを捧げる日々を送ろう。
「さあ…おいで」
青白い炎が謙信の身体から立ち上り、また気圧された馬が突然後ろ脚だけで立ち上がり、信長を振り落した。
ここが絶好のチャンスだったのに謙信は動かず、慈悲を持って信長を見下ろし、問うた。
「降伏は許さないよ。私は君を倒さなければならない。君はしてはならないことを幾つもした。そして私を怒らせもした。だけど苦しまずに逝かせてあげよう。さあ…」
大地に両手を突いて俯き、土を握りしめていた信長はすでに敗北していたかに見えた。
桃が安心し、謙信が馬から降りて近付こうとした時――
「桃は儂のものだ!そして天下も何もかも、儂のものだ!」
「!」
握りしめていた土を謙信の顔目がけてまき散らし、一瞬ひるんだ謙信の首を狙った一刀が水平に薙いで、桃が叫んだ。
「謙信さん!!」
だがすかさず風の音を読み切って腰を屈めた謙信の頭上を刀が通り過ぎていき、白刃の閃きと共に…刀を握っていた信長の右手首が、落ちた。
「ぐ…ぅっ!」
「卑怯な手とは言わない。戦場においてはよくある手だしね」
僧服には土がかかり、信長は大量に出血している右手首を押さえながらぎらつく瞳で謙信を睨みつけ、左手で刀を持ち直すと謙信に襲い掛かった。
「病にも貴様にも敗けぬ!儂は第六天魔…」
言葉が途切れ…その足元に、信長の首が…転がった。
…これで桃が現代へと戻れる条件が整い、謙信は小さく息をつきながら愛馬を止めた。
「私が勝ったらそれを返してもらうよ」
「たわけ。貴様のような優男に儂が負けるものか!」
激高した信長が馬の腹を蹴り、猛進してきた。
ぐんぐん迫ってくる信長に対し、謙信は向かいもせずにまた大きく深呼吸をすると、毘沙門天に祈りを捧げた。
「信長に天誅を」
――前世で夫婦になれなかった愛しい女がまた去ってしまう――
だが桃が現代へ戻ることを望んでいるならば、また来世に想いを馳せよう。
今生では、側室も正室も娶らない。
桃と結ばれるまでは…毘沙門天に祈りを捧げる日々を送ろう。
「さあ…おいで」
青白い炎が謙信の身体から立ち上り、また気圧された馬が突然後ろ脚だけで立ち上がり、信長を振り落した。
ここが絶好のチャンスだったのに謙信は動かず、慈悲を持って信長を見下ろし、問うた。
「降伏は許さないよ。私は君を倒さなければならない。君はしてはならないことを幾つもした。そして私を怒らせもした。だけど苦しまずに逝かせてあげよう。さあ…」
大地に両手を突いて俯き、土を握りしめていた信長はすでに敗北していたかに見えた。
桃が安心し、謙信が馬から降りて近付こうとした時――
「桃は儂のものだ!そして天下も何もかも、儂のものだ!」
「!」
握りしめていた土を謙信の顔目がけてまき散らし、一瞬ひるんだ謙信の首を狙った一刀が水平に薙いで、桃が叫んだ。
「謙信さん!!」
だがすかさず風の音を読み切って腰を屈めた謙信の頭上を刀が通り過ぎていき、白刃の閃きと共に…刀を握っていた信長の右手首が、落ちた。
「ぐ…ぅっ!」
「卑怯な手とは言わない。戦場においてはよくある手だしね」
僧服には土がかかり、信長は大量に出血している右手首を押さえながらぎらつく瞳で謙信を睨みつけ、左手で刀を持ち直すと謙信に襲い掛かった。
「病にも貴様にも敗けぬ!儂は第六天魔…」
言葉が途切れ…その足元に、信長の首が…転がった。