優しい手①~戦国:石田三成~【完】
どくどくと耳に聴こえる何かの音で目覚めた桃は、それが三成の腕枕であることに気付き、すでに起きていた三成の胸に頬を寄せた。


「三成さん…おはよ。なんか…照れるね」


「言っておくが、俺は不完全燃焼のままだ。次にまたこうして会えるのはいつだ?謙信とよく話し合っておかねば」


あまり長い間この天守閣に留まり続けていれば不審がられるに違いない。

もっとこうしてまどろんでいたかったが、三成とはそうするわけにはいかないので仕方なく起き上がると浴衣をちゃんと着て、三成と唇を交わした。


「交代でいいんじゃない?でもたまには私の休息日も作ってね」


「月のものの七日間。それが休息日だ。後はまかり通らぬ」


「三成さんのけち」


そして桃は笑いながら天守閣を去り、毘沙門堂で毘沙門天と対面している謙信の隣に無言のままに座った。


「謙信さん」


「ようやく戻ってきたね。こんな生活…続けられるかい?」


「うん、私は大丈夫。でも…呆れないでね?私にはこれがベストなの」


「べすと?よくわからないけど最善という意味かな?私も大丈夫だよ、君が傍に居てくれるだけでいいんだ。さあ、一緒に極楽浄土を見に行こうか」


「うん」


――この世界で生きてゆくと決めた。


お父さん、お母さん、お姉ちゃんたち…

私は1番大切なものを2つもこの時代で見つけることができました。


お父さん、お母さん、お姉ちゃんたち…ごめんなさい。

親不孝で手のかかる妹だったけど、絶対幸せになるから心配しないでね。



「毘沙門天さん…ありがとう」


「うん。ありがとう」



――その後、謙信の治世は彼が…彼らが天寿を全うするまで続いた。

そして彼らとの間にできた子たちは、協力し合って末永く日の国を平和に導き、極楽浄土を作り出した。


そして彼らは再びきっと巡り合うのだろう。


毘沙門天がその手にしっかりと握っている運命の糸を離さない限りは、彼らは巡り合い続ける。


謙信も、三成も…優しい手をしていた。

何度転生してもその手だけは、変わらない。


未来永劫、ずっと――


(完)
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