優しい手①~戦国:石田三成~【完】
窓を開け放っていたのでひんやりとした外気が部屋に流れ込んでいるにも関わらず、三成と桃の身体は汗に濡れていた。


…床は綺麗なままで、窓際に追い詰められた形で三成に愛されていた桃は、相変わらず激しい一面を垣間見せる三成にくらくらしつつ、上がりそうになる声を堪えるために三成の肩を噛んだ。


「…これでは、まるで…俺がそなたを手籠めにしているようだな」


「三成さ、三成さん…っ」


さっきから三成の名しか口から出てこない桃の唇を唇で封じて、月光に照らされる白い肢体に脳髄を溶かされながらも昨晩謙信に愛された桃の首筋を強く吸って痕をつけた。


「や、だ、駄目…っ」


「謙信につけられたと言えばいい。あの男…律儀だな」


桃の身体に痕をつけていない。

だが今桃の身体に所有印をつけたことで、謙信はその挑発にもちろん乗ってくるだろう。

のんびりとしているように見えて意外と熱い男なのだ。


「何度抱かれた?その回数だけ俺もそなたを抱く。言え、何度だ?」


「覚えて、ないよ…っ!お願い三成さん、お布団に…っ」


懇願されて桃を抱き上げると床に下ろし、すぐに覆い被さった三成が生き急いでいるように見えた桃は両手で頬を包み込むと、息を整えながらさらに懇願した。



「三成さん…私たち、もうずっと一緒だからお願い…ゆっくりいこうよ。もう死ぬまで離れないんだから。3人でずっと一緒だから…。ね?じゃないと私が壊れちゃうよ…」


「…すまぬ、俺ばかり焦りすぎた。桃…許してくれ」


「うん、私は大丈夫だから。ねえ、夫婦の誓いのお酒を飲もうよ。用意してくれてたんでしょ?」



枕元にはお神酒の入った銚子と盃が2つ。

三成は浴衣で腰から下を隠して座り、桃は浴衣を身体に巻き付けて正座をすると三成が手にした盃にお神酒を注いだ。


「神官さん役は居ないけどいいよね。さ、飲んで飲んでっ」


三々九度でお神酒を飲み干した三成は、指で唇を拭いながら桃の盃にお神酒を注いで鼻で笑った。


「それを飲めば酔いつぶれるのは目に見えている。まあいい、急ぐ必要はない。だが謙信より先にそなたには俺の子を生んでもらうからな」


「そんなの生まれてみないとわかんないよ。じゃあいきまーす」


――その後、酔いつぶれた桃が朝まで爆睡したのは、言うまでもない。
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