レンアイゲーム
そのとき、理科室の中からダンッと物音が聞こえた。
かすかに声も聞こえる。
なんだ、理科室にいるのか。
俺は理科室の入り口から、中の様子をこっそりうかがう。
…………は?
キス?
キスしてんだけど!?
めずらしく俺は動揺する。
てか、他人のキスの場面、初めて見たわ…。
「……んやっ………離しっ……」
うめく飯島。
それを見て俺は、理科室の中に一歩踏み入れた。
「な~にしてんの」
そう聞くと同時に、2人の唇が離れる。
よほど怖かったのか、飯島は頬を濡らしながら床にへたりこんだ。
男子生徒の方は、やっぱりさっきの銀縁メガネのやつで。
「学校でなにやっちゃってんのよ」
もう一度聞く。
……俺も人のこと言えねーか。
「ねぇ、メガネ君。飯島、嫌がってたじゃん?」
「なっ…何でお前がここに……」
答えになってねーな。
「別に。今日理科室に忘れ物したから、それとりに来ただけだよ、俺は」
説明するのはめんどいから、適当に嘘ついた。
「……お前、い、いつも七瀬にべったりくっついてて……ストーカーかよ」
は?
何だって?
“は?”なポイントがたくさんあるぞ?
こいつ、“七瀬”って呼んでんのか!?
ストーカーの分際で、よく人を呼び捨てできんな。
しかも、何で俺が“ストーカーかよ”なんて言われなきゃなんねーんだよ。
おめーだろーが。
「ストーカーはお前だろ、メガネ」
「おっ、俺は、七瀬が無事に帰れるように、後ろから見守ってただけだよ」
「見守り役は俺だよ。後ろから見守るとか……お前、どんな身分でやってるの?」
メガネ君はわなわなと震えている。
「おっ、俺と七瀬はっ…、一生を誓ったんだぞ!」
……あんだって?
「ちっ、違う!一生なんて誓ってない!」
すかさず、床に座り込んでいた飯島が反論する。
「あんたのことなんか何とも思ってないって、さっき言ったじゃん!」
「……だってほら、キーホルダーのジンクス」
メガネ君は、ふたつに割れたハートがくっついて、綺麗なひとつのハートになったキーホルダーを見せてくる。
このキーホルダーには、そんなジンクスがあるのか。
だからこのキーホルダーを飯島にあげたのか。