契約恋愛~思い出に溺れて~
「結婚はしないわよ」
「どうして、ですか?」
もはや泣き出しそうな顔で綾乃ちゃんが言葉を重ねる。
私がこの子の年の頃、確かとっても幸せだったんだわ。
まだ結婚する前で、週末にユウの部屋で朝を迎えるのが当たり前だった頃。
愛されてる安心感が、私をいつだって守ってくれて。
どんな困難にも、立ち向かっていける気がしていた。
ねぇ、ユウ。
力を貸して。
私は自分を甘やかしてくれる手を、もう手放さなきゃ。
ゆっくりと、左手の薬指についた指輪なぞった。
ユウがくれた、結婚指輪。
ユウが死んでからもずっと、外すことなんかできなかった。