契約恋愛~思い出に溺れて~

「いいの。仕方ないから」

「ホント?」

「うん」

「じゃあ、紗彩ちゃんさえ良かったら」


彼はそう言って立ち止まった。
私は数歩先に歩いてしまって、慌てて立ち止まる。


「慰めてあげようか」


続けて呟かれた、英治くんの言葉に空気が固まる。

ぎこちなく顔をあげて彼の方を見ると、冗談とも本気ともつかない様な表情でこちらを見ていた。


「達雄の代わりになろうか?」

「え?」

「結婚はしない。慰めるだけの関係に」


英治くんの手が伸びて、私の頬を触る。

心臓がわしづかみにされたようにギュッと軋む。

寒さのせいだけじゃなく、体が震える。
何故か、目の周りだけ熱く感じる。

< 160 / 544 >

この作品をシェア

pagetop