契約恋愛~思い出に溺れて~
「いいの。仕方ないから」
「ホント?」
「うん」
「じゃあ、紗彩ちゃんさえ良かったら」
彼はそう言って立ち止まった。
私は数歩先に歩いてしまって、慌てて立ち止まる。
「慰めてあげようか」
続けて呟かれた、英治くんの言葉に空気が固まる。
ぎこちなく顔をあげて彼の方を見ると、冗談とも本気ともつかない様な表情でこちらを見ていた。
「達雄の代わりになろうか?」
「え?」
「結婚はしない。慰めるだけの関係に」
英治くんの手が伸びて、私の頬を触る。
心臓がわしづかみにされたようにギュッと軋む。
寒さのせいだけじゃなく、体が震える。
何故か、目の周りだけ熱く感じる。