契約恋愛~思い出に溺れて~
「送ってく」
「いいわよ。達雄は大丈夫なの?」
「しばらく一人で考えさせとくよ。一人じゃ危ないから、夜道は」
「じゃあ駅まで……」
「ああ」
追いついて来て隣を歩く。
英治くんは私より頭一つ分大きい。
吐きだす息は白く、夜の闇の中へ広がっていく。
隣を歩くだけで、いつもとは違う煙草の匂いに、少し心音が上がる。
「いいの。別れちゃって」
「うん。潮時だったのよ。達雄と結婚する気はないんだし」
「寂しいんじゃないの?」
「それは……」
そうだけど。
何年たったってユウが戻ってくる訳じゃない。
寂しいのは、きっともう一生付きまとうものなんだ。