契約恋愛~思い出に溺れて~
「も、もしもし」
『紗彩ちゃん? 俺』
英治くんだ。
慌ててとったから画面も見てない。
彼も名乗ってない。
このタイミングだからってのもあるけど、
声で分かるようになってしまった。
「英治くん?」
『そう。……さっきのありがとう。紗優ちゃんもそこにいる?』
「うん」
『かわって』
会話している間も、紗優は興味しんしんで私の傍にひっついている。
携帯電話を渡して、「おじさんから」って言ったら嬉しそうに顔をほころばせた。
「もしもし、おじちゃん?」
楽しそうに話す紗優を見てると嬉しいけど、同時に寂しい気持ちも湧きあがる。
今、紗優の中に、ユウはどのくらいいる?
パパのこと、あんまり覚えてないって言ってた。
英治くんが優しくしてくれたら、紗優はユウのこと、完全に忘れちゃうんじゃないだろうか。