契約恋愛~思い出に溺れて~
「紗彩ちゃん? のって?」
気がつけば、紗優は当然のように車に乗り込んでいる。
私も後部座席の紗優の隣に乗り込んだ。
「さて、どこ行こうか。あいにく雨だしね」
英治くんは歌うようにそう言うと、車を走らせた。
すぐに国道に入り、車の波に乗る。
「紗優ちゃんは何が好きなの?」
「うーんとね。ハンバーグ! ママのハンバーグおいしいんだよ」
「はは。そっか。でも今日は外で食べるからなー。レストランのハンバーグでも良い?」
「うん!!」
センターミラー越しに、英治くんと目が合う。
私は慌てて首を振った。
「ち、違う。おいしくないわよ。私料理は下手だもの!」
「何も言ってないじゃん」
「なんか言いたそうな目つきだった!!」
「それは気にしすぎ」
英治くんの口元が、ゆるく弧を描くのが見えた。
ギュッと掴まれたような心臓が、苦しい。