契約恋愛~思い出に溺れて~


『あのさ……』


英治くんの声も、なんとなくいつもと違う。
リラックスしてる声じゃなくて、少し固くて緊張してるみたいな。


「なに?」

『とりあえず、この間は急にごめん。ドタキャンになっちゃって。
それだけは謝らせて』


その言葉に、月曜のことをまた思い出す。

何度も何度も頭に蘇ってくる、英治くんと彼女の姿。

あの人は、英治くんの大切な人?

私と会うはずの時間、あなたはずっとあの人と居たの?


喉もとから湧き出てくる、嫌な気持ちが止められない。

私に、そんなこと言う資格ないのに。

英治くんの行動に文句をつける筋合いなんか、ないのに。


「……大切な人がいるなら、私になんて構わないで」


聞き取れないほどの小さな声が飛び出してしまった。
全身に血が上って、体が震えてくる。

なんてこと、口に出しちゃったの。

聞こえた?
聞こえてない?

お願い。
聞こえてないって言って。

< 235 / 544 >

この作品をシェア

pagetop