契約恋愛~思い出に溺れて~

 その後、私は何度も深呼吸をしてから、不在着信の一覧を出した。
その中から英治くんの名前を選んで電話をかける。

呼び出し音がなっている間、息が止まりそうなほどドキドキする。

なんて言われるだろう。

今更何って言われたらどうしよう。


六コール目で、電話がつながった。


『紗彩ちゃん?』

「……っ」


その第一声に、うまく言葉が出てこない。


「あの、……あの」

『紗彩ちゃん、だろ?』

「……うん」

『どうしたの』


どことなく冷たい口調。

当たり前だ。
あんな風に電話を切って、一週間何の会話もしてないんだから。
優しく声をかけてもらえるかも、なんて思ってる私が図々しい。

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