契約恋愛~思い出に溺れて~
「ごめんなさい。突然。あの、今ちょっと話せる?」
『……いいよ。どうしたの?』
「あの、えっと」
『もう話す気がないのかと思ってた』
そう言われてしまって、心がくじけそうになってしまう。
けれど、夕方の紗優の姿を思い出して、なけなしの勇気を振り絞った。
「この間、ごめんなさい」
『いいよ。ドタキャンしたのは本当だし、怒られても仕方ない』
「あの、あのね」
『うん』
「この間の話なんだけど。あの日、本当はどうして急にダメになったの?」
『……うん』
少しためらいの感じられる沈黙。
そんなに言いづらいことなの?
やっぱり、あの人が絡んでるの?
そんな疑問が頭を駆け巡る。
電話からは一つ大きく息を吸う音がした後、さっきとは打って変わってはっきりとした声が聞こえた。