契約恋愛~思い出に溺れて~
「……あの」
『待ってるから。達雄の家を出る時電話して?』
「う、うん」
それ以上、問いかけることもできなくて、電話を切った。
部屋の中に響くのは、紗優の寝息だけ。
私はゆっくり手を伸ばして、その小さな頭をなでる。
「う、むぅ」
紗優は小さくうめいて、寝がえりを打った。
ユウによく似た寝顔。
「ごめんね、紗優」
小さく呟いても、寝てる紗優からは返事がない。
「多分、ママ振られちゃう。そしたら、紗優も英治くんに会えなくなっちゃうね……」
そう考えたら、何も言わない方がいいのかな。
英治くんは、紗優に会うのは嫌がらないと思うから。
「私は、どうしたらいいんだろう」
答えの出ない問いを、静まった部屋に投げかけた。