契約恋愛~思い出に溺れて~
「……っ!!」
体を起きあがらせて目を開けると、驚いたような紗優の顔が見えた。
「ママ。おきた? びっくりしたよう」
「起きた? よく寝てたね」
ここは相変わらず車内で、後部座席で前かがみになった紗優が、運転席の英治くんと話をしている。
「私、……寝てたの?」
「うん」
「寒くない?」
「寒くなんか……」
言いかけて、体に英治くんのジャケットがかかっているのに気づく。
思わず胸元でギュッと握りしめた。
「あ、ありがとう」
「いいえ。もうつくよ。おなか減ったろう」
「うん。サユおなかぺこぺこー」
車が停まったのと同時にあたりを見回す。
よく行くファミリーレストランのチェーン店だ。