契約恋愛~思い出に溺れて~


「……っ!!」


体を起きあがらせて目を開けると、驚いたような紗優の顔が見えた。


「ママ。おきた? びっくりしたよう」

「起きた? よく寝てたね」


ここは相変わらず車内で、後部座席で前かがみになった紗優が、運転席の英治くんと話をしている。


「私、……寝てたの?」

「うん」

「寒くない?」

「寒くなんか……」


言いかけて、体に英治くんのジャケットがかかっているのに気づく。
思わず胸元でギュッと握りしめた。


「あ、ありがとう」

「いいえ。もうつくよ。おなか減ったろう」

「うん。サユおなかぺこぺこー」



車が停まったのと同時にあたりを見回す。
よく行くファミリーレストランのチェーン店だ。

< 287 / 544 >

この作品をシェア

pagetop