契約恋愛~思い出に溺れて~
「紗優ちゃんがここがいいって言うから」
「えへへ」
紗優は嬉しそうに笑うと車を降りる。
先に降りていた英治くんが、飛び出しそうな紗優の手を掴んだ。
「待って。紗優ちゃん」
「えー、はやくいこうよう」
「ちょっと待ってて。ほら、紗彩ちゃん、まだ目ぇ開いてないんだろ。おいで」
「え、あ……はい」
差し出された手に、ためらいながら手を乗せる。
引っ張られて、地面に降り立った。
なのに、何だかふわふわして落ち着かない。
少しの待ち時間の後、席に案内される。
「3にんだと、おおきいテーブルなんだよね」
紗優は周りを見て、嬉しそうに笑う。
周りのお客は、殆どが家族連れで、大きなテーブルを囲んでいる。
そんな事を紗優が今まで気にしていたなんて知らなくて、私はハッとさせられた。