契約恋愛~思い出に溺れて~

「……誰?」


ハンドルから手を離して、英治くんが少し近づく。

薄暗い車の中、彼の髪がサラリと揺れるのを、私はただ見つめた。


「言わせるの?」

「言って」


きっともう分かってるくせに。
ずるい。

だけど。

今までずっと誤魔化してた自分の気持ちに

これでケリをつける事が出来るなら。

やっぱり言葉にして伝える事は、必要な事なのかも知れない。


「……え、英治くんが、好きになったの」


夜目でも分かる。

彼の唇が優しく弧を描いた。

大きな筋張った手が伸びてきて、私の震える頬を触る。

頬骨に沿ってゆっくりと、冷たい指先が線を描く。

その手は顎のあたりで止まると、大きく開いて私の頬を包みこんだ。
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