契約恋愛~思い出に溺れて~
「俺は、達雄にそう言われたら、紗彩ちゃんは戻るのかと思ってた。
……だから、言えなかったんだ。誤解されてるとは思ったけど」
「……」
「死んだ旦那をずっと愛してる。ずっと、忘れたくないんだろ?
その為に達雄と付き合ってたんだ。だから、その誘いを断る理由はないと思ってた」
「……あるわよ」
「なに?」
「それは」
拳を握りしめる。
車内がそんなに暑い訳でもないのに、私の掌には汗がにじんでいる。
「す、好きな人が、出来たんだもの」
車が停まる。
いつの間にか河川敷の方まで来ていた。
人気のない堤防の上の道路。
英治くんが車のライトを落とすと、あたりは真っ暗になる。
月明かりだけが差し込んで、どこか幻想的な雰囲気になった。