契約恋愛~思い出に溺れて~

すると英治くんは私の左手をスッと握った。


「……え?」

「行こう」

「え。……ハイ」


寂しいって思ってたのが、ばれてるんだろうか。
どうしてこう、いいタイミングで、こんな嬉しくなるような事をするんだろう。


「紗彩ちゃん、9号?」

「え?」

「指輪」

「あ……うん」


その質問にはどんな意図があるのだろうと、ドキドキしながら顔を見ると、何食わぬ顔で笑ってる。


「聞いてみただけ」

「あ、……そう」

「何でもすぐ買うと怒られそうだしねー」

「な。そう言う訳じゃないわよ。ただ、欲しいからってすぐ買ってたら我慢が身につかないじゃないの」

「ハイハイ」

「もう、真剣に聞いて!」

「ははは。聞いてるよ」


軽い返事に苦笑する。

なんだか、英治くんのとの会話は雲をつかむみたいだ。

だけどそれを心地いいと思ってしまうのだから、今の私は重症なのだろうけど。
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