契約恋愛~思い出に溺れて~

 3月も半ばの最近は、少し寒さが緩んできているけど、
空が青から朱へ、そして藍へと移り変わろうとしているこの時間になると、
さすがに息が白く見える。


「おじちゃんち、ここ?」


白い壁のおしゃれなアパートだ。
ちゃんと駐車場のスペースもあって、家賃は結構高そうだなと思ってしまう。


「どうぞ、はいって?」


英治くんの部屋は二階の角部屋だった。

入った瞬間に、彼の煙草の香りがする。
おそらく室内にしみついているのだろう。


「あー、おじちゃんのにおいだー」


紗優が同じような反応をする。

小さなキッチンと、ユニットバス。

それにワンルームの8畳ほどの部屋があり、男の人の一人暮らしの割には、さっぱりとして見える。

英治くんは綺麗好きなのかしらと思って周りを見渡すと、棚の上には埃がかぶっていたりするからそうでもない。

全体的に、物が少ないのかも知れない。

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