契約恋愛~思い出に溺れて~


その時、演奏が終了した。

ステージのライトが消え、一瞬だけ静寂が訪れる。
その後、一人の拍手を皮切りに、あふれるような拍手がわき上がった。

波みたいな拍手。

久しぶりにそんな拍手を聞いた。

麻子さんの演奏以来だ。

再び、引っぱり出されたようにユウとの日々が眼前をちらつく。



あの日、気持ちを確かめ合った日もこんな拍手を聞いて、カウンターの下で手を握った。

繋がっていたくて。

どこでもいいから繋がって、波にのまれても決して離れないように。

そうして握り続けていたはずだったのに。



「……揺られてるみたいだな」


ポツリと聞こえたそんな声が、私を現実に引き戻した。


呟いたのは、渋い顔をして頭を抱えている黒髪の男の人だ。

酔っぱらっているから、そんな風に言ったのだろうか。

それとも、私と同じ感想を持ったの?
拍手の波に揺られてるみたい、と――――――。


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