契約恋愛~思い出に溺れて~


「あなたは」


私が呆けて黒髪の彼を見ていると、英治さんが私たちを見比べて一つ溜息をつく。


「俺は葉山英治。アンタは?」

「え? あ、横山紗彩、です」

「紗彩ちゃんね。あっちは西崎達雄。俺たち会社の同期でさ。
君、一人で飲んでるなら一緒に飲もうよ」

「え、ええ」


英治さんに誘われるがまま、私は2人の間に座った。
けれども、視線は達雄と呼ばれた黒髪の彼の方にばかり向かってしまった。

彼は私に近い。
彼なら私の気持ちを分かってくれるのかも知れない。

何故だかそんな風に思えた。

おそらく冷静な判断をしてはいないのだろう。
酔いは回っていて、視界は緩くぼやけている。


グラスを傾けた英治さんが、私の指先を指差して言う。


「指輪……それ、結婚指輪だろ? 
旦那さん待ってるんじゃないのか?」

「え?」


左手の薬指におさまるシンプルなプラチナリングは
ユウが結婚する時にくれたものだ。

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