契約恋愛~思い出に溺れて~


「ユウとの結婚は反対されてたから。説得してる間に妊娠しちゃったのよ。
それで、籍がいれれたのが出産の2ヵ月前で。おなかも大きかったし、そういうのは一切省いちゃったの」

「そうか。じゃあ、しよう。結婚式」

「え? でも今更」

「いいじゃん。俺は初婚なんだし。紗彩だって一生に一度くらいドレス着たいだろ?」

「それはまあ、そうだけど」

「今からだと中々式場がとれないかな」


私の迷いは通じていないのか、彼はもう先の事をブツブツ呟いている。


「英治くん。でも、そんな皆に見られるの恥ずかしいよ」

「じゃあ、家族だけにすればいいじゃん。披露宴とか、そこまで格式ばってやらなきゃいいんだろ?」

「だけど……」

「一つくらい紗彩の初めてが欲しいんだけど」


意外な言葉に、私は一瞬訳が分からなかった。


「え?」

「これぐらいしかなさそうじゃんか」

「あ……」


拗ねたような彼の表情。

それは私の迷いを吹き飛ばすには、十分な程の力を持っていた。


< 435 / 544 >

この作品をシェア

pagetop