契約恋愛~思い出に溺れて~
オーナーが、何もいう前にジントニックを私の前に置く。
私の好きなカクテル。
達雄とここで飲むときは、いつもこれを飲んでた。
何気ない気遣いが嬉しくて一口含む。
さっぱりとした感触が口中に広がっていった。
カウンターで、達雄を挟んで両脇に私と英治くん。
こんな風に座ると昔を思い出してしまう。
「まだ綾乃ちゃんのこと、好きなんでしょう?」
私の問いかけに、ますます背中を丸める達雄。
「考えると、どうしても動けない。10歳も年の離れた義理の兄貴なんて、恋愛の相手としたら最悪だ」
「どうして?」
「綾乃の為にならないだろう?」
「そんなの」
チラ、と英治くんを見れば、もうお手上げだというように肩をすくめる。