契約恋愛~思い出に溺れて~


彼は情けない顔で、グラスの水滴を指でいじりながらポツリと言った。


「綾乃が、……プロポーズされたって」

「あら、そうなの」

「もう25だ。確かに結婚してもおかしくはないよな」


達雄が苦笑する。

そんな顔をするなら、さっさと彼女に自分の気持ちを伝えればいいのになんて思ってしまう。


「どうするの? 賛成するの?」

「反対する理由が無い」

「あるじゃない。手放したくないくせに」

「……ない。いつまでも一人じゃ綾乃が可哀想だ」


達雄のこういうところがどうしようもないと思う。

どうあっても妹を忘れられないなら、本当の気持ちを伝えてしまえばいいのだ。
血が繋がっている訳でもないのだから。

だけど、そうした時の綾乃ちゃんの気持ちを考えると言えないのだろう。
思いやる優しさだけがあっても、辛いだけだと思うのだけど。

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