契約恋愛~思い出に溺れて~
「だったら、ちゃんと兄を演じることね。中途半端はよくないわよ」
「ああ。そうだな」
ウーロン茶をグイッとあおる。
何だかもうすでにやけっぱちみたいな顔をしている。
私もお酒を口に含んだ。
少し酔った方がいい。
これから起こることを考えれば。
「あ、こんにちは」
演奏を終えたピアニストが、私たちを見て笑顔を見せる。
「こんにちは。香織さん」
「いつも仲良さそうで羨ましいです」
はにかみながらオーナーの方へ向かう彼女。
迎え入れるオーナーも優しい笑顔を向けている。
羨ましいのは、こちらの方だ。
きっとあの二人は、素敵な恋をしているのだろう。
私たちみたいな、ずるい慣れ合いの関係じゃない。