キスはおとなの現実の【完】
「じゃあ、うちの近所だ。すぐそこなんですよ、うちの店」

そういって今わたしが歩いてきた道の先を指でさす。
カズトさんは数年まえに両親が他界して、実家の酒屋を継いだのだそうだ。

「ああ。そういえば」

商店街のなかにちいさな酒屋があったのをわたしは思いだした。

毎日仕事のいきと帰りにまえをとおっているけれど、はいったことも気にしたことも一度もない。

そんなことを考えていると、べつのことまで思いだした。
< 88 / 224 >

この作品をシェア

pagetop