キスはおとなの現実の【完】
「いいですよ、そんなの」

業者の男性は笑っていう。
この人の基本的な表情は笑顔であるようだ。

「気にしないでください。酒の席で払った金がしらふのときに返ってくるのって、なんだかへんな感じがしません? 苦手なんですよね、おれ」

なんとなくわかるようなわからないような理屈である。

だが、わたしとしては借りをつくったままになってしまうみたいで、どうにもおさまりが悪い。

ちょっと考えてからいった。
< 90 / 224 >

この作品をシェア

pagetop